叩きあげの英語 042
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叩きあげの英語 042

 

言葉というものはいろいろな語が複雑に噛み合ってまとまった意味を持つものであるから、どうしても一つの質問をわかってもらうためには、他との関連性に言及せざるを得ないのである。しかしそれも相手によりけりで、「人を見て法を説け」の味を噛みしめる昨今の私である。


私が運転免許をとったのはその年から三年後の昭和二六年である。だからモータープール当時は、運転はおろか、車に関してはまったくの無知であった。そして私のなすべき通訳はとくにエンジンの各部の名称とその機能を知らなければ、まったくどうにもならないものだった。

 

通訳として禄を喰む以上知らないではすまされなかった。それこそ「義務」を表わす suppose を使ってこの事を表現すると、I am suppposed to know all about the names and functionings of all the parts of the engine. ということであろう。


私は、だからドライバー諸氏から必死になってそれについて教えてもらった。彼らも大変親切に説明し、教えてくれた。とくに車のトラブルがないときは、私の仕事もないわけで、そんな暇を利用しては私は一生けんめいに勉強した。


車の好きな私にとっては大変興味深かった。ただドライバー氏のそんな説明を聞きながら、同時に頭の中で英訳をこころみたのだが、なかなか思うようにできず、こんなていたらくで、もしこれを実際に通訳しなければならないとしたら、一体どうなるのか。不安な材料ばかりだ。こう考えるともう彼の説明は上の空に聞いてしまい、そんな自分にずい分と不甲斐なさと焦りを感じたものだった。