叩き上げの英語 233
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叩き上げの英語 233

 

すると女性どもがくすくす笑い出した。日本人たるの証明、私ははっとした。どこからか「うたまろ」とか「ビッグワン」とかの、男性にとってはおだやかでない名詞が聞こえてくる。冗談ではない。

そんな証明ができるか、と心の中で叫んだ。どうやら彼女たちは本当の事情が飲みこめたらしい。追求の手は、からかいに転じたようだ。

本当に私を女の園に闖入した不届きな痴漢だと彼女らがあくまでも信じるなら、とっくにAPを呼べたはずである。 私は少し気が楽になった。

彼女らの興味が性に移ったからである。があくまでも殊勝な態度を私はとりつづけた。相手がその気なら少しからかわれてやれと私は考え、言った。

I: Utamaro is nothing but a picture of an exaggerated staff. Not every Japanese is so attractive.  

「スタッフ」とはこの場合は「もの」であり、KP時代のGIたちのワイ談によく出てきたから早々に知った語だが、十二年後に、しかもこのような状態で役立とうとは。ワイ談もときには身を助けるものである。  

彼女たちの間から笑いが洩れた。アトラクティブも彼女らの気に入った適切な形容詞だったらしい。

勤務も終った夕食後のひとときに、からかうにはもってこいの気の弱そうな、そしてワイ談も英語で語れそうな格好の日本人男性が舞い込んできたとばかりに彼女たちは私を歓迎し始めたようだ。

話も大分きわどくなってくる。