叩き上げの英語 225
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叩き上げの英語 225

 

初めて降り立つ異郷の地は、空港から見渡すだけでも正に洋画に出てくる風景そのものであった。あこがれのアメリカ、サンフランシスコに今着いたのだ、という興奮も感激も、どういうわけか期待したほどは感じられなかった。

長途の旅の疲れのせいなのかも知れない。  空港に迎えにきた軍用バスに乗り込む。私は早速窓を開け、走るバスの中から首を心持ち外に突き出していたら、黒人の運転手が、Hey you, put your neck in. と怒鳴った。

あわてて首を引っ込める。そして私も怒鳴り返したのである。Why should I? It isn’t dangerous, is it? 「どうしてだ。別に危なくないではないか」。日本とちがって道幅は広いし、対向車との距離は数メートルはある。  

運転手は自分の目の前にあるバックミラーを見上げながらこう言ってきた。No, it isn’t, but I cannot see the rear view. つまり、危険ではないが、窓から出す私の首がじゃまになってフェンダーミラーによる後方確認ができない、ということである。  

そうなるとあきらかに非は私にある。バスや大型トラックの運転経験のない私にはそんなことは気づくはずもなかった。Oh, sorry. という私に、すかさず That’s alright. と、まるでそれを待っていたかのように返事が返る。

これでお互い気持よくなれる。これが私のアメリカでの初の英会話であった。