叩き上げの英語 222
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叩き上げの英語 222



その職員がいきなり私に質問してきた。「救急車とは何ですか」。私にこれを英語で説明しろというわけである。

与えられた日本文を通訳するものとばかり思っていたが、要するに物の定義づけの問題であったのである。  

これこそが私がかねがね主張する、本当の表現力を問う問題である。英語で説明しようと努力する前に、日本語で説明できなくてはならない。  

私は長年の通訳の経験、つまり即英作文即会話という長年の経験から副詞や形容詞はすべて取り去り、その文を一瞬骨組みだけの裸にしてしまうことには慣れていた。

そしてその後に必要な形容詞をたいていは関係代名詞や副詞を使ってその文を伸ばしていくという文章構成テクニックを自分なりに考え、持っていたので、早速の応用である。  

「それは車だ」と言いかけ、単純な形容詞はつけた方がよいから That’s a special type of vehicle そして頭の中のスコープに vehicle という残像がレーダーよろしく残っているうちにそれにくっつける「すなわちそれは」から関係代名詞の that を連想し、

どうするのかというと「運ぶ」のだから carries とすれば、あとは自然に「だれを patient を」、「どこへ」とつながり、「最寄りの病院」だから to the nearest hospital とつづく。

さらに「何のために」そんなことをするのかと考えると「救急治療のため」といえるから前置詞 for を使って for immediate medical care. と最後を飾る。  

Well, an ambulance is a special type of vehicle that carries a patient to the nearest hospital for immediate medical care.  

間髪を入れない私のこの説明に士官は多分に驚いたらしい。