叩き上げの英語 209
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叩き上げの英語 209

 

I don’t want to pay for anything I haven’t ordered and I am not going to pay for anything that these ファッケン girls got.  

初めは気持よく女の子にすすめて飲んでいても、そのあと自分のいうことをきかぬと、酒の酔いも手伝って、くせの悪い奴はとたんにぐずり出すのである。  

日本の飲み屋で出す、いわゆるお通しが、「たのみもしないもの」として日本に慣れていないGIたちのかんにさわるのである。  

そんな説明などしても時間がかかるだけで彼らの到底納得するところではないのは、私は経験からよくわかっていた。

こんな時には彼らのもっともこわがっている「外出禁止処分」のおどかしをかけるのが一番である。  

いままでの私は、人の意見を他の国語に直す通訳であり、ゆえに自分の主体はなにひとつなかった。が今はちがう。自分の考えを、しかも英語で、相手に伝えて納得させ、飲食代を払わせなければならない。いわば仲裁人である。  

Hey, watch your language, PFC. 「ファッケン」と言う彼を私はたしなめた。三軒茶屋でのMPのドスの利いた声は私にはでないけれども、そんなつもりの私だった。  

I am Sgt. Nakano of JASDF and you know me, don’t you?  

「私はジャスデフ(航空自衛隊の英語名の頭文字をつづけて読むとこうなる)の中野二曹である。あなたは私のことを知っているね」。

酔眼もうろうとまではいかぬが大分酔っているらしく、彼はふらふらと上体を私にもたせかけてきながらうなずいた。