叩き上げの英語 208
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叩き上げの英語 208

 

また日本の普通免許証はGHQのPSD当時の昭和二十六年、この米軍免許証所持者に対して与えられた実地試験免除の特権を利用して、筆記テストだけでとっておいた。  

もちろんドライバーはいなくて、私自身が運転しなくてはならなかった。わが自衛隊のドライバー、谷三曹はとなりのベッドで白河夜船の高いびきである。

なぜ私がこんな寒い中他人事で夜遅くに出かけなければならないのかとぼやきながらも、自分の米軍に対する仕事の中で、いろいろな折衝や施設上のたのみごとなどが、非常に円滑に運んでいることなど考え合わせると、このような手助けが彼らに恩となって買われているのかも知れないとも思った。  

夜の山道は危険である。現在の道はきれいに舗装され、道幅も大分広くなっているが当時はトラック一台分の幅しかなく、対向車とはすれ違えなかった。米軍のトラックが運転を誤まって谷底に転落し、死傷者が出たこともあった。そんな事故現場を通りかかるたびにぞっとする。

そのあたりにうすくたちこめた霧は乳白色で、つよいライトに切りさかれては車の両側に分かれ、後ろに流れていく。相も変わらず金銭上のいざこざが駅前の飲み屋にあった。

たのみもしないのに出したものにもお金を払うのか、女の子が飲んだ分まで払わなきゃならんのかと英語でがなり立てる。見るとレーダーオペレーターのGIである。  

山頂のレーダー基地は小規模でその米兵の数も少なく、大ていのGIの顔は知っている。私も彼らに英語のできる制服自衛官ということでよく知られていた。