叩き上げの英語 199
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叩き上げの英語 199

 

彼は相変わらずマグジェイにいたが、彼の話によると航空自衛隊では技術訓練のため、大量の隊員を米国に派遣留学させているという。

しかし英語ができることを前提としているので、今のところ応募者は少なく、隊では人材を求めている。今ちょうど英語を専門職とする人を募集している、ということであった。

当時はだれでもそうであったろうが、特に私はKP時代からアメリカという国に憧れ、行ってみたい希望は人一倍強く、何かチャンスがあったらと、その機を狙っていたので渡りに舟と飛びついた。

さっそく越中島へといそいだ。彼と会った一時間後には私は人事課募集係から必要な応募書類を手に入れていた。応募〆切りは一週間後の、たしか八月二十日だったと記憶している。危うく間に合ったのは幸いだった。

試験は英語のみで、筆記と米人との英会話であった。試験当日、会場へ行ってみておどろいた。いやおどろいたというよりなつかしさが先立った。なんと筆記テストの会場が私のいたS-2の事務所ではないか。

さらに面接英会話は顕微鏡の件で忘れもしない司令官のオフィスであった。偶然とは常に意表外のこととして起こるものと知ってはいるが、しかしこれは偶然といってよいものか。

何か大きな力がそこに働いているのではないかと思われるぐらい、私にとっては夢見る心地であった。

RTOといい、GHQのPSDといい、私にはその試験のたびに何か大きな力が私を助けているように思えて仕方がない。さらに私にとって僥倖はつづく。

面接の米人はマグジェイの士官で、私とは面識こそないが、しかし衛生学校と通信学校の中野という名前は知っていると言ってくれた。