叩き上げの英語 197
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叩き上げの英語 197

 

私の仕事はウッド氏が前夜、彼の家で、または出勤途中の車の中でテープに録音した本国への手紙をディクタホンにかけて再生し、それをタイプすることであった。

今のようなきれいな再生音は当時は機械の性能上まったく期待できず、つねにたんがからんだような歪の多い音声であり、ましてや英語である。

一語わからぬものがあると、あとにつづく文はたとえ全部わかったとしても、それをとばしてタイプを打ちつづけるわけにはいかず、そのまま仕事は中断し、外出の多い彼を待たねばどうにも解決はつかなかった。

日本文ならさしずめ、「五月一日付の貴書信拝受いたしました。この段感謝いたします」というような文は

We have received (又は We are in receipt of) your letter dated May 1, for which we thank you.

という英文になるところだが、彼の書く手紙の大半は本社とのそれであるから、それほどていねいである必要はなかった。

彼のそんな手紙の書き出しはほとんどこうであった。

This letter will acknowledge receipt of your letter dated May 1, Reference No. 123.

又は will のあとに serve を入れて ~will serve to acknowledge receipt of~ とすることもあった。

それまでは私はこのような、いわゆるビジネスレターの経験はなく、このウッド氏の手紙のタイピングで貿易などビジネス界での表現を数多く学びとることができた。