叩き上げの英語 165
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叩き上げの英語 165
2018年08月02日(木)5:00 AM
Something next month, you may have to testify before the court that you tried to sell a microscope for him.
「来月中にあなたには証人として法廷に出てもらわなければなりません。彼にたのまれてその顕微鏡を売ろうとしたことを証言してほしいのです」というその言葉はやさしいが、否応を言わせない、冷たい威圧感があった。
軍事法廷で証人の通訳は何回もしたが、今度は自分が証言をする立場に立たされることになったのである。 米軍第一騎兵師団(1st Cavalry Division)は埼玉県の朝霞市にあった。
この基地はキャンプドレイク(Camp Drake)と呼ばれ、日本の陸軍士官学校を接収したものだった。 軍事法廷はそこで開かれた。エージェントの言ったとおり翌五月であった。
型どおりに右手を上げ、こんどは通訳ならぬ、証人としてその良心にしたがい真実のみを述べる旨宣誓させられた。
だれでもそうだが、特に当事者としてこのような法廷といういかめしい場所にくると、寸分のすきも許さないその独特の雰囲気にのまれ、気おくれがするものである。
ましてや私は英語ができるというので、普通ならつく通訳も私にはつかず、だから私は終始英語をしゃべらなければならないハンディを余儀なくされた。いくらできるとはいえ、ことは外国語である。
彼らの容赦のない質問は、それを答えるのに充分に注意をしないと、あげ足をとられるばかりだ。以下裁かれている憲兵司令官の名は仮名である。