叩き上げの英語 155
ホーム > 叩き上げの英語 155

叩き上げの英語 155

 

Where in the hell are you? (一体全体、どこにいる?)  

年が明けて昭和二十五年になった。この年には朝鮮戦争が始まり、米軍がまた戦火の中に身を投じることになった。六月のことである。  

これより二ヶ月前の四月には戦後初めてのミス日本コンテストが読売新聞社の主催で行なわれ、初の栄冠には京美人の山本富士子が選ばれた。彼女は十八歳であった。

平和になった日本という実感がしみじみとかみしめられた。 また米国式に女性名がつけられた台風が次つぎに日本をおそった。七月にはグレース台風が九州を、九月にはジェーン台風が京阪神にその猛威を振った。

この台風で死者225人が出た。 水ばかりではなく、火にも崇られた年であった。四月には熱海で約一千戸が焼失し、中心街は灰じんに帰した。おどろきも醒めやらぬ七月には京都の金閣寺が全焼した。放火だった。  

またこの年、野球のナイターが初めてお目見得した。東京の後楽園での大映対毎日の試合がそれである。このナイターというのは日本製の英語で、外国発行のどの辞書にもそのような名詞は載っていない。  

松がとれたとはいえ、まだ正月気分が抜けきらぬ一月の十六日、この第八騎兵連隊は全部隊が移動することになった。移動先は深川(現在の江東区)の越中島にある東京高等商船学校である。

永代橋を深川八幡宮に向かって渡ると程なく門前仲町の大きな交差点にぶつかる。そこを右折し、徒歩三分ぐらいのところにその学校はある。