叩き上げの英語 139
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叩き上げの英語 139
2018年06月02日(土)5:00 AM
またこの喧騒にほっとする安らぎを与えてくれたのがそれと隣接する原宿であった。
そこは明治神宮の表参道を中心とした街で、百数十本のふたかかえもあろうかと思われる大木が一キロメートルに渡って立ち並ぶ。神宮の森を背景にした豊かな季節感と広々とした歩道がその街に独特の風格を醸し出していた。
当時の兵士たちは激しい訓練の中、この街でひととぎの解放感を味わっていたという。KPとして入ったところが第七騎兵連隊、そして通訳となった今、こんどは第八騎兵連隊である。なにかそこには因縁めいたものが感じられた。
私がジマーマン中尉の世話でその連隊に入ったのは彼からマジホールのロビーでその話があってから約二ヶ月経った九月初旬であった。
残暑はきびしかったが、それでも秋を思わせる風が時折り吹いてきた 中尉にはその件以来会うことがなく、無沙汰のまま日が経つにつれて憲兵隊に入ることへの期待感も徐々にうすれてきた。
そして彼もその場限りの口先だけだったのかと思い始めたときに彼から私に同司令部にすぐ来て欲しいという電話連絡が入ったのである。
私はRTOに入れたときと同様、入りたいと思っていたところに入れるという喜びもさることながら、自分が信頼し、かつ頼りにした人から裏切られることがなかったということも大変うれしかった。
連隊正門で来意を告げた。当時は日本人のガードはまだ採用されておらず、米兵が銃を持って立っていた。用があって米軍部隊を訪れる日本人のすべてが英語ができるとは限らず、だからその度に通訳が正門まで出向かなければならなかった。