叩き上げの英語 132
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叩き上げの英語 132

 

彼女はつづけた。「私を部屋の中へ連れて行こうとしたのです。私は二人だけになるのがちょっとこわかったので、ロビーでお話ししましょう、と言ったのですが、

彼は私の腕を強くつかんで私を無理に中へ入れようとしたものですから、思わず大声を上げてしまったのです」  

これは私の思ったとおりの状況であった。三沢の憲兵隊で翻訳した調書はこのようなものばかりで、いかに彼らが日本人女性を手軽に扱おうとしたか容易にうかがわれるのである。

また誘われるままに安易に彼らについていく彼女らも不注意・不謹慎のそしりをまぬかれないのではないだろうか。私は次のように作文した。  

He opened the room door and asked me to go in. I thought it might be better to talk in the lobby. So I told him, but he grabbed me by the arm firmly and tried to force me into the room. I was so scared that I screamed.  

「部屋の中へ連れていこうとした」は He tried to take me in the room すれば簡単であるが、そうするとその言葉の印象として最初から無理矢理、という感じになってしまい、正しい描写とはいえない。

「ドアを開けた」という表現が「どうぞお入りください」という柔らかい誘いにつながるので、私は He opened the door and asked me to go in. と通訳した。

中尉が中にいて彼女を招じ入れるのなら当然この to go in は to come in となるところである。この come と go は自分を基準として、自分に近づく方向なら come で、反対に遠ざかる方向なら go であると理解するとよい。