叩き上げの英語 120
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叩き上げの英語 120

 

PART7

英語ができるとは 英文を組み立てる力があるということだ そろばんができる? That’s good enough.  


いろいろな思い出を残し、私が三沢に別れを告げたのはその年の暮れで、クリスマスを一週間後に控えた寒い日だった。雪が連日のように降りつづき、三沢の町は白一色に閉ざされていた。  

基地ではクリスマスの飾りつけで賑やかだというのに、そんなことには一向に無頓着な村人たちは家々にひきこもり、まだ始まったばかりのその厳しい寒さが静かに通り過ぎて行くのをじっと頭を垂れて待っているようであった。  

また彼らは、それが堪え難くも気むずかしい自然を迎える知恵であるかのように物音ひとつ立てようとしない。なにかの拍子に立てた音はたちまち深い雪の中に包まれて凍りついてしまう。

村々を飲みこんだ静けさは重くるしく、どっしりといつまでもそこにのしかかっていた。いつの間にか私はばくちを覚えてしまっていた。もらった給料はほとんどそれに使ってしまった。

家からの再三の手紙にも送金せずときどき良心が痛んだ。根が勝負運に弱く、指先の不器用な私は、もうかる日よりも損する夜の方が多かった。くつには穴が開き雪がしのびこんでくる。はいているズボンもよれよれ。

だが新調しようにもお金がなく、浪人者の尾羽打ち枯らした姿で東京にもどらなければならなかった。今ならきっと、いい若い者が、と言われそうだが、まだ当時は物が自由に手に入りにくい時代だったので、別に人目に恥づかしいという思いはしないですんだのは幸いだった。