叩き上げの英語 105
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叩き上げの英語 105



また私は基地に働く女性たちの間にも善きにつけ悪しきにつけ、知らぬ存在ではなかった。それもそのはずで汽車で三沢に着いた瞬間に、彼女たちが会う最初の男性がこの私であり、かついろいろな質問をされ、ときにはAPの輿の向くまま、彼女たちにとっては本当は答えたくないプライベートなことまでも答えることを半ば強要された相手だからだ。


さらには、少なくともわれわれ立ち会いの下で検診された「仲」ででもある。決して知らぬ存在であるはずがない。私は一人一人の名前も顔も覚えてはいないが、彼女らに道などで不意に挨拶されて、とまどいや気まずい思いをすることがよくあった。  


駅のとなりに時計屋があった。次の列車まで少し時間があったので、私はふとそこに足を向けた。その店の主人は東京から最近来たとか言っていたが、話がはずむと奥さんがお茶などを出してくれる。またそのお茶が大変おいしく、それも楽しみだった。


その日は曇り空で、冷たい雨まじりの風が駅の前の道を時折り吹き抜けて行った。午後からは本格的な雨になり、次第に激しくなってきた。その時計屋には先客がいた。外に幌つきのジープが雨に濡れて止まっていたが、やはりGIだった。


そしてそばに彼の連れらしい若い日本人の女性がいた。見るとその米兵は私の知っているサービスクラブ(service club)のマネージャーであった。サービスクラブとは酒や軽食などを提供する基地内のクラブで、ダンスも踊れる兵士たちの夜の憩いの場である。