叩き上げの英語 102
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叩き上げの英語 102
2018年03月06日(火)5:32 AM
派手な服装の若い女性が五、六人、いかめしいAPと軽装の通訳につき添われて農道をそろって歩いて行く姿は、いかにもちぐはぐで、まわりののどかな田園の風景からまったく遊離した一種異様なながめであったにちがいない。
医院に着くと、その日に限ってAPは私の耳もとに何か小声でささやいた。別に大きな声で言ったところで英語のそれほどわかる人はあたりにはいないのに、と思いながら私も相手につられて耳をさし出すと彼は言った。We have to be in there today, too.
つまり今日はわれわれも中に入らなければならない、ということであった。昨日までは私たちは医院の玄関にも入らず、戸外で待っていたから彼の言った意味が、今日は待合室に入る、ぐらいに私は考えた。
だが事実はそうではなく、検診台のあるその検診室にまで立入るとわかって私はびっくりした。この措置は、過日検診を受けた女性がお金を医者につかませて虚偽の診断書を書かせたことがあったからとのことである。
A woman gave some money to the doctor to get a false certificate, and we don’t want it to happen again. APは首をすくめて That’s an order. と言いつつ苦笑した。命令だから仕方がないという調子である。
私たちは勇をこしてその室に入った。入ったことは入ったが、窓の外を眺めていた。いくらなんでも、われわれは紳士であらねばならなかった。