叩き上げの英語 097
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叩き上げの英語 097

 

わが国の公娼施設は東京の吉原を中心に全国各地にあったが昭和三十三年に廃止された。しかしそれに代わるトルコが出現し、デートという名にかくれて管理売春が今や半ば公然と横行している実態からみて、人間の生命がつづく限り、また男女がこの世を構成する限り、この性の問題は消えることはない。

 

三沢基地もその例外ではなかった。公娼は基地にもっとも近いところでは野辺地というところにあった。東京の大森では門前市をなす盛況であったと聞くが、野辺地はそれほどではなかった。聞くところによるとそこは衛生管理が悪く、米兵は一部の地域には立入り禁止になっていたらしい。

 

当時、各米軍基地周辺に集まり、米兵に春を売るプロの女性にも二種類あって、不特定のGIを相手にするものと、ただ一人だけを決める、いわゆるオンリーさんとがあった。オンリーさんは、あわよくば彼と結婚してアメリカへ行こうなどという夢を抱いていた。

 

当時はアメリカは大金持ちの集まりで、夢が花と咲きみだれ、幸せ一杯の国というイメージが、とくに若い女性たちの間に定着していた。約十年後に私も米国へ行ったが、そういう希望を抱いて、アメリカに渡った人の、何と多くの人が夢破れ、その結婚生活に破綻を迎えたことか。

 

特にテキサス、ミシシッピーという南部地方に数多くのそんな事例を見た。三沢基地の玄関である国鉄古間木駅にはそういった女性のすがたが目立って現われるようになり、村々の長老たちのまゆをひそめさせた。

 

彼女らは当時の流行の先端を行く、いかり肩の派手な原色の上着に超ロングスカートというスタイルで、まだまだ着物姿だった地元の女性との間に際立った対照を見せていた。