叩き上げの英語 094
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叩き上げの英語 094

 

いろいろな例をあげて、相手にそうとわからせなければならないからである。これが物の名前ならそれを指さすか手に持って、「これは何というか、英語で」と聞けばよい。

しかし「連絡をとるのは英語で何というか」は How do you say 連絡をとる in English? ではどうにもならない。

 

いろいろ苦しんで言ってはみたが、私のまだつたない表現ではどうしてもわかってもらえなかった。

彼は最後に一冊の小冊子を私に見せてくれた。それはAPが外で事件に遭遇した場合、どうそれに対処するか、その仕方を述べてあるもので「APの心得」ともいうべきものであった。

 

むづかしく、私には理解できなかった箇所もいくつかあったが、構わず読んでゆくと、In this case, an AP shall contact his office by radio or telephone if available. という文に出会った。

そう、この contact である、私の求めていたものは。今ならこの日本文は強調文とわかり英語もそれらしく It is this “contact” that I have been looking for. と軽く作文し口にも出せるが、当時はそれもかなわず、ただ This contact is what I want. と言ったのが、私の精一杯の表現であった。

この what は、三沢、とくにこの憲兵隊に来てからその使い方がわかったもので、もはやそれは疑問詞の「なに」という意味ではなく、「もの・こと」という意味である。