叩きあげの英語 080
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叩きあげの英語 080

 

三沢基地の労務者は大別して米軍直接雇用とコントラクター雇用の二つに分けられた。直接雇用は基地正門前にある日本人労働管理事務所が管理し、一方コントラクター雇用は主として土建会社が仕事を米軍当局と契約をし、独自に労務者を雇用したもので、これの人事には米軍側は一切関知しなかった。


通訳はひっぱりだこというので、私は労管(労働管理事務所)に行けばただちに職が決まるとは知っていたが、少し基地内の様子を見てからでも遅くはないと思い、村田氏のメスホールで翻訳や通訳をするという条件で三食を保証してもらった。もちろん食事以外は無給である。ひまなときメスホールのGIにたのんでジープに乗せてもらい基地内の様子を見てまわった。いろいろな日本人に会っていろいろなことを聞いた。


さすが東京とちがい、数多くいる労務者の中にも英語のわかる人は皆無に近かった。だからどこの部署も通訳を欲しがっていたのも無理はなかった。


基地憲兵司令官が、私が「いそうろう」しているメスホールに用事があってきたときに私と知り合った。是非憲兵隊に来ないかと誘いの声がかかった。仕事も大変面白そうなので私は承知した。三沢に着いて四日目のことであった。


翌日、私はタイプした履歴書を持って労管を訪れた。習いおぼえたタイプで打った初めての提出書類がこの履歴書であった。すでに憲兵隊から連絡が入っていたらしく、係の人が心得顔にてきぱきと書類をつくってくれた。そこへ入ってきた人がいた。