叩き上げの英語 081
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叩き上げの英語 081

 


彼は私のことを知っているらしく「やあ」といいながら私の肩をたたいた。どこかで会ったことがあるが、思い出せず、いぶかしげに見る私にそうと察したのであろう、彼は「松林ですよ、横浜モータープールの」と言った。

そう言われれば正しく彼である。まさか彼が青森くんだりまで来ているとは私には思いもよらぬことであった。モータープールでは一面識しかなかった彼だが、私のことをよく覚えていてくれたのである。ドア越しに私を見て彼もびっくりしたと言っていた。

RTOのときの先生といい、この松林氏といい、私はどうも行く先々で知人にめぐり会える運命にあるらしい。知らぬ土地で知人に会うことは何ともうれしく、心強い限りであった。

彼はこの労管で所長をしていると言った。何であれ、長と名のつく地位にあることはすばらしい。モータープールで一介の通訳をしているよりはるかによいのではないかと私は思った。

再会を喜び合う暇も惜しく、私は早々に手続きを終えると外に出た。仕事は山ほどあるからできるだけはやく来てくれといわれていたので心は急いでいた。

私の勤務するところとなった憲兵司令部は正門から歩いてたっぷり三十分はかかる。何しろ広大なところだからいちいち歩いていてはどうにもならないかといってバスが走っているわけでもないので基地内は歩く以外どうしようもなかった。