叩きあげの英語 077
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叩きあげの英語 077

 

「今後ずっと英語で身を立てていくつもりなら英文タイプは習っておいた方がよい。英語でのペーパーワーク(書類の仕事)はすべてタイプ打ちで、手書きなどはあってもサインぐらいのものである。だからタイピングは英語の世界では必要欠くべからざるものである」


言われるまでもなく、私もそのことはかねがね承知はしていたが、ただ漠然とそう思っていただけのことで、数日後、彼女が私の決心をうながすようにタイプ練習帖を私に持ってきてくれるまでは、実際どのようにしたらタイプが習えるのか、そんなことを考えるまでには至らなかった。


やっと戦災からの復興がその緒についたばかりの昭和二十三年当時である。タイプの学校などはまだどこにもなく、タイピングを身につけたければ進駐軍になんらかの職種で入り、そこでタイピングを練習する以外にその方法はなかった。


私は猛然と練習を始めた。それまでは事務室の片隅の机の上に無雑作に置かれていたタイプライターを横目でみて素通りしてしまった数ヶ月間をとりもどすかのように、私は暇をみつけては打ちまくった。数週間後にはどうやらスピードもついて何とか打てるようになった。


以来、英語からまったく縁の切れたことのない私にとって、このタイピングがどれほど役に立ったか計り知れない。私が将来、本格的な英語ビジネスへ参入できたのも、すべてその基礎をこのRTOで身につけたからだと信じている。