叩きあげの英語 067
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叩きあげの英語 067

 

当時の横須賀線は横浜駅では、下りは五番線、上りは六番線から出ていた。この番線はトラック(track)という。これは陸上競技のトラックと同じ語である。


いまでこそ主要駅の通路は、とくに地下の場合は大変複雑に入り組んでいて、日本人同士でさえ、口頭による案内はむずかしいが、当時はそれ程でなく、案内し易かった。


まず私は指を差しながら Go to the platform over there and wait at track 5.と言った。命令文である、五番線で待て、と言えばそれで充分事足りるが、勉強のため、少しでも長くしゃべりたかった私は、「そこにくる電車ならどれに乗ってもよい」という英文をつけ加えた。


最近身につけた any のチャンスであった。Take any train that comes there. このように any が名詞を形容して「すべての(もの)」という味をつけ加えているが、しかしそれは無制限ではない。必ずそのあとにその条件というよりも範囲を示すものがくる。それが関係詞、つまり関係代名詞か又は関係副詞である。


この場合は関係代名詞で that を使い、「そこにくる」という条件をつけていると理解すれば、この構文は自分の力となる。わけのわからない、単なる丸暗記は語学力ではない。私はいつもそう自分に言いきかせていた。


これで相手に通じないわけがない。彼はサンキューと言いながら私に握手を求めてきた。私もそれに応じながら、だまっているわけにもいかず、だといっておきまりの Not at all. や Don’t mention it. など、日本人の英会話に必ずでてくる、ワーパターンのせりふも私のプライドが許さなかった。