叩きあげの英語 063
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叩きあげの英語 063

 

人前でほこらしげに英語をしゃべる奴にろくな者はいない。聞く人が聞けばすぐにブロークンの低劣英語はすぐそのお里が知れる。

あきらかに彼らは日本人だが、英語で問いかけたからには、そのまま英語で続けようと、Sorry you boys, you are not supposed to use this car unless you have the AGO card.

サポーズを must not の代りに使ったのである。そして「AGOカードを持っていないなら」を If you don’t have the AGO card. とはせず、「~を持たない限り」と考え unless を使った。

この if と unless を較べた場合、どちらかといえば、if は仮定で、unless は条件の意が強いのである。

専用車に乗れる資格は「もしも」よりも「でない限り乗れない」という、いわば否定の条件ではないかと、私は常々考えていた。

彼らが日本人の私の英語に刺激され、ちょうど私がKPのときあの素晴らしい通訳の人からはげましを受けたように、彼らもまた正しい方法で英語を学んでくれたかどうかは今となっては知る由もないが、願わくはそうであって欲しいと思うのである。

このときの英語はまた、そのAGOカードをとくに強調するのなら You are supposed to have the AGO card to use this car. とすればよい。不定詞の to use this care は、KPのときの nothing と同じ使い方に見えて、実はそうではない。

前者は、「~を使用するためには」という目的を示しているのに対し、後者は名詞(nothing は名詞である)を形容していると気づく。だから前者は副詞用法であり、後者は形容詞用法であるとわからなければならない。