叩きあげの英語 055
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叩きあげの英語 055

 

ロビー中央には長大なソファーが数個背中合わせに置かれ常時三、四○人がゆったりと腰かけ、自分の汽車の出発時刻を待っていた。


入口を入るとすぐ左右両側にトイレがあった。左側が婦人用、右側が紳士用で、常時ジャニター(janitor)と呼ばれる中年のおばさんが、まるで番をするようにその入口で小さな丸椅子に腰かけ、ちょっとでもごみや汚れが目につこうものなら、まるで仇にめぐり合ったようにそれに飛びついた。


だからトイレはいつもぴかぴかだった。大柄な外人がトイレに行くと、そこにちょこんと木のスツールに腰かけているおばさんは、まるで置物のように小さく見えた。


おとなしく、ただ黙々と掃除に専念する様は、外国テレビ映画によく出てくる、肥えていてしかも恐ろしく気の強い口をきく掃除婦とはまったく対照的であった。


その上彼女らは大変親切であった。簡単なボタンつけなどをしてよく、米婦人などからチップをもらっていたようだった。


RTOの入口は大きなガラスのドアであった。その重いドアを開けて中に入ると正面にインフォメイション(Information Section)があり、私が所属する Baggage Section は右側にあった。


日本に来たばかりで、西も東もわからないGIたちは、だから転属やTDY(Temporary duty のことで「派遺勤務」のこと)の命令書をもらうとまずこのRTOにくる。また上司にそうするように指示されたようである。