課題文45 いじめた人間は往々にして自分のしたことを忘れるが、いじめられた方は死ぬまで憶えている。
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課題文45 いじめた人間は往々にして自分のしたことを忘れるが、いじめられた方は死ぬまで憶えている。

 

課題文45 

いじめた人間は往々にして自分のしたことを忘れるが、いじめられた方は死ぬまで憶えている。

 

この文はコンマを境とする2個文の構成である。先ずその第一文から行こう。主語は「いじめた人間」である。ここで「いじめる」という他動詞を知る。それは abuseである。

 

だとすればこれに erをつければ、もしかして名詞になるのではないか、と経験から判断する。そう、abuserという立派な名詞があるのである。それは「いじめる人」である。

 

するとその結語の動詞は「忘れる」となる。forgetである。国語ではこの様に断定的に言っているが、英語では「そのように なりがちである」と考えて助動詞のmayを補足する。次の図式のように。

 

The abuser may forget <往々にして A> <自分のしたこと B>

 

forgetは他動詞であるから、その目的語がBとなっている。だがその前に動詞のforgetを形容して、従って副詞である Aが来ているが、これは「時々」とみればsometimesである。またこれは 「しばしば」のoftenとしてもよい。ここで次のようになる。

 

The abuser may forget often <自分のしたこと B>

 

上記のBであるが、その「こと」から matterや thingを想起するのであろうが、これもう一歩前進して whatを使う場面である。これは疑問詞ではなく、関係代名詞としての whatである。whatが「もの、こと」という意味での関係代名詞として使われる条件として、その後に続いで次が来る。

①主語とその結語の動詞(他動詞に限る)

②動詞

 

本文の場合はBの「自分のしたこと」であるが、これは the abuserを指すのでheとしよう。男性と見たわけである。そしてその結語の動詞は他動詞「した」である。「する」はdoであり、今ほしいのはその過去形のdidである。つまり上記の①条件に相当するので what he didとできる。

 

英文(第一文) 

The abuser may forget often what he did.

 

では続けて第二文に行こう。その主語は変って「いじめられた方」である。ここで思い出して欲しいのは一般に「形容詞にtheをつけると、その形容詞は複数の名詞になる」ということを。たとえば the richとすると「金持ちたち」となる。

 

だが本文の、この場合はどのようにしたらよいか。注意しなければならない点は「いじめられる、られた」という受身の味わいである。このようなときには他動詞の過去分詞にtheをつけるのだ。そこで the abused となる。つまり他動詞の過去分詞は、これ即ち「形容詞」と見ても差し支えないのである。しかも「られる、られた」の味を持つ形容詞である。

 

するとその結語の動詞の部分は「死ぬまで 忘れない」である。強い否定であるからwill not よりも neverを使ってwill never forgetとする。ここで次の図式ができる。

 

However, the abused will never forget <自分になされたこと A><死ぬまで B>

 

上記Aであるが、これも whatを使ってその後に「なされた」である。つまりwhatに動詞が続く②のタイプである。しかも受身形である。だからis doneとしたいところ、過去形であるから was doneである。「自分に」は主語を指しているので to himである。

 

However, the abused will never forget what was done to him<死ぬまで B>

 

Bは until he diesとしたくなるのであるが、より簡単に to his last breathとしたい。前者は接続詞の untilを使っていて、従ってその後に文が来ているのに対して、後者は軽く前置詞でまとめている。

 

英文(第二文) 

However, the abused will never forget what was done to him to his last breath.

 

 

次回予告課題文46 

これは私の実体験から学んだことであるが、単なる理屈だけで、問題が全て解決するわけではない。

 

中野幾雄