叩きあげの英語 006
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叩きあげの英語 006

 

 NHKの第一放送は連日、米軍基地に勤務する労務者を求める求人案内を流していた。朝七時台だったと記憶している。その日の放送を聞き、その日に私はその築地に来た。開く橋で当時は有名だった勝鬨橋のたもとである。

 

その経理学校は米陸軍第七騎兵連隊とその呼び名も変わり、その正門にはアーチが掲げられ、First in Japan, First in Tokyo と読めた。

 

つまり「日本・東京一番乗り」というわけである。何とすっきりした表現なのだろう。旧制中学の3年間で英語は学んだというものの、度重なる工場への勤労動員で実際は2年ぐらいであろう。

 

ただ私は英語が人一倍好きだった、というよりも、小学校からの連続学科でなかったものは英語だったため、小学校での不成績を反省し、英語に男(?)をかけて中学英語に全力を傾注したというべきであろう。

 

だから、当時もこと英語に関する限り、見るもの聞くこと、すべてが私の興味の対象であった。

 

 経理学校正門に、私と同じ放送を聞いて集まって来たのはほとんど二十歳前後の若者たちであった。そしてその大半が、行きたくともその学校が戦火で焼失してしまった中学生か、軍隊から帰って来た、いわゆる復員軍人といわれる人々だった。

 

そして、そのうち何人が、私のように正門のアーチの英語に興味を持ち、その表現の簡略さに目を見張ったことだろう。