叩き上げの英語 003
その結果、英文は読める。理解もできる。単語もある程度知っている人は量産されているが、さて自分の表現したいこと、技術レポート、製品取扱説明書、カタログを英文で表現するなど、ビジネスマンとしての肝心なことになると、まるっきりできない。
英語が書けない、あるいは書けても表現内容がきわめて稚拙であったり、英会話ができるといっても、単に棒暗記の英語で、シチュエーションがかわるととたんにメロメロになる。
英会話を高い月謝を払って習っていながら、外人の姿を見ると、避けて通るというような、まことにおかしな現実なのである。
ことを行なうのに、その目的をはっきりと認識し、その手段を正しく選ばなかったために、英語が身につかないのである。
実際、英語を習う目的は、表現力の養成、ズバリこれでなくてはならない。会話も英作文も通訳も翻訳も、これなくしては身につくものではない。そのことを、私は声を大にして訴えたく、本書を著わした。
私が、いかにして英語をマスターしてきたか。私の<体当り英語人生>のなかから、英語習得のカンどころのようなものを読者の方に感得していただけるなら、望外の幸わせである。
ふりかえってみると、私もかつては英語に苦労してきた。英語学校で、muchの比較級を質問されて、「マッチ、マッチャー、マッチェスト!」と胸を張って大声で答えて、満座の人々に笑われた。
多感な心は傷ついて、その日一日でその学校をやめてしまった。much, more, mostさえ言えない青年が、努力して苦労して、英語を身につけてきた経過をお話し、あわせて短時日により豊富な英語力が身につくようにと願って、まとめたのが本書である。