叩き上げの英語 215
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叩き上げの英語 215

 

冬季には吹雪に見舞われる。金北山中腹の隊舎から米軍と自衛隊のレーダー要員が一週間のシフト、shift (交代)勤務で山頂の基地を目指して歩く。

精々二、三百メートルの高さであるが、一メートルを超す雪にすっぽり埋まっているため車輌はおろか、雪上車さえまったく役に立たない。  隊員一人一人が「がんじき」をはいて一歩一歩踏みしめながら昇る。

私も所用あって隊員と一緒に一回昇ったが、運悪く途中で猛烈な吹雪に遭い、危うく遭難しかけたことがあった。 足元から吹き上げる雪が顔を直撃する。

目も口も開いていられない。呼吸すら困難になってくる。隊員の背負っている無線機で「われ遭難中」と緊急信号を送ったが、受けた方でもどうにもできず、ただ頑張れと応答してくるのみであった。  

幸いにしてそのときは大事に至らず何とかして山頂にたどりつけたが、それまでは雪とはスキーでしか親しんでおらず、雪は私にとって楽しい相手であった。

がしかし、ひとたび風を得るとこれほどまでも人々に死の恐怖をあたえるのかと、雪の恐ろしさを身に沁みて知ったのであった。  

隊長田村一・三佐の指示で私は毎日昼休みに隊の食堂で隊員に英語を教えることになったが、米軍につとめる日本人職員もそれを聞きつけ、彼らも私の授業に参加したいと言ってきた。  

私のこのクラスは昼休みを利用するとはいえ公務である。隊員でもない人に参加させるのはどうかということで、私は彼らに、米軍の隊長を通じて自衛隊の隊長に話を通すように指示した。