叩きあげの英語 71
私のこの目的をたずねる質問に答えるには、それがどんな文になろうとも、完了形を含む相当の作文力が彼には必要であることを私は充分計算に入れていた。
案の定、彼はわからないらしく返答に窮していた。相手の言うことがわからないときの常套手段として、英会話のテキストは次のような言葉を用意している。すなわち「もっとゆっくり話して下さい」という Will you speak more slowly? である。
遅く言おうと速く言おうと、その文の構成が理解できぬ以上、わからないものは永久にわからないのである。そんなことも知らず、ただテキストどおり型どおり言えばよいと思っている人の何と多いことか。
絶句している相手に私は質問を変えた。Why did you come here? と、答え易いように理由を聞いたのである。すると彼は我が意を得たりとばかり Because I want to speak English with my friends. と答えてくれた。なかなかりゅうちょうであったが、しかしこの文は変わりばえのない、どこにでもころがっている文句である。
今もそうであるが当時も why と because のやりとりはことほど左様に非常にポピュラーであった。私はうなずき、さらに別の意地悪な質問、といっても相手や私たちを取り巻いている多勢の人に、会話をしたければまず作文が必要であることを認識させるためのものであるが、こんな質問をこころみた
How much can you speak English? と、私はよほどこれに do you think をそう入して、「あなたはどのくらい英語が話せると思うのか」という How much do you think you can speak English? としようかと思ったが、少し複雑になり過ぎると思ったのでそれはよした。