叩きあげの英語 065
ホーム
> 叩きあげの英語 065
叩きあげの英語 065
2017年10月19日(木)5:33 PM
背広の上着の胸によく会社などのバッジをつけるが、しかし控え目な人はそれがほこらし気と人の目にうつるのをきらい、それを裏返しにして留め金の方を表に出しているのをよく見かける。
これはむしろ控え目などではなく、その逆で、かくせば見たくなる心理を心得たものと考えられる。これと同じようにRTOにもひとつの流行があった。
つまり真赤なアームバンドを下からめくり上げてRTOの文字をすっぽりかくして、しかもなお上部一センチぐらいは出しておく。裏地は白だから、
その白の上に赤の帯がくっきりと浮かぶことになり、それが一条の線となって腕を取り巻いている。
RTOの文字をかくし控え目な態度を示すはずが、その実本当は目立っているのである。私はしかしそんなことはしなかったが、アームバンドは常にそのままの状態でつけていた。
私もまた目立とう精神が旺盛であったらしい。モータープールにはなつかしい油のにおいが残り、知った顔のGIもそこここにいた。例のインテリドライバーもいた。
やめてから数ヶ月しか経っていないのにやはりなつかしい気持ちには変わりがない。私の後任として松林信四郎という通訳がいた。互いに自己紹介となり、同じ英語でめしを食うという意識は二人をすぐに打ち解けさせた。
彼はしかし、私のRTOにはあまり興味を示さなかった。派手なことはおきらいと見える。後に彼とは青森県の三沢で再会することとなるのである。