叩きあげの英語 040
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叩きあげの英語 040

 

PART4

 

電話英語! Oh terrible!―しかし,やるっきゃない!

 

通訳第一歩

 

 かくて紹介され、行かされたところは横浜桜木町の駅から数分のところにあったモータープールである。米軍の何という部隊所属の何というモータープールであったかは忘れたが、すべてくすんだ色に塗られたジープやトラックが百台あまりも整然と並べられてあったのは壮観であった。

 

 モータープールとは車輌の修理や整備を兼ねた、いわばガレージで、それらの運転者は大半が日本人だった。私の仕事は、彼らと米軍との間の通訳であった。英語を書く必要は簡単なもを除いては殆どなかったと記憶している。だからこそ、私のような未熟者でも紹介されたのであろう。

 

初日にもらったゲートパスには interpreter とタイプしてあった。もはやKPではなかった。やっと曲りなりにも通訳として第一歩を踏み出せたのである。昭和二十年の九月に初めて米軍に働くことになり翌々年の十二月に初心が実ったわけである。私はそのよろこびをじっと一人かみしめた。

 

I was KP two years ago in 7th Cav. Regiment, Tokyo.(私は二年前は東京の第七騎兵連隊のKPであった)といってもそこのGIたちは信じてくれなかった。人一倍の努力は大きな進歩をもたらす。

 

父の工場をやめる手続きのため、翌々日からそのモータープールで勤務を始めた。例の有楽町駅前で買った英会話の本から「私は最善をつくす I do my best」と責任者のGI(Sergeant in charge)に私が言ったところ、彼は一言「ユーベラ」と答えただけだった。