叩きあげの英語 010
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叩きあげの英語 010

 

 例によってその日の朝人選されたときはいつもと様子が違うと思ったが、この日を境にその日その日に仕事が変わるという臨時的な作業は終わり、それぞれが定まった仕事に長期的につくことになったというわけである。

 

 私の仕事が決まったその食堂は C troop の食堂で、入口のドアの上に Mess Hall と書かれた小さな看板がかかげられてあった。食堂は dining room としか知らない私だが、軍隊ではそれ特有の呼び方があるのかなと、別に気に止めたわけではないが、ふとそんなように思ったりした。

 

 この連隊には、このような兵員の食堂がABCDの各トループ用として四つ、それにヘッドクォーターズ(Headquarters-通常HQと省略する)、つまり司令部勤務の兵員用の一つ、計五つの食堂が設けられ、私は、その中のCトループの食堂で働くことになったというわけである。

 

 各トループには約百人の兵員が所属し、それぞれのメスホールで食事をするのだが、その時はメスケと呼ばれる野戦用の食器セットを各自が持っていてそれを使った。食器セットは凸凹のある皿と平坦な皿、それにコーヒー用のカップの三点セットで、それらがうまいぐあいに重なり合いきちっと持ちやすいよう大変コンパクトなものになっていた。

 

 このメスケというのは実は彼らの発音どおりに言ったまでで、本当はメスキット mess kit というのがその名称である。メスキットがメスケとわれわれの耳には聞こえたのである。