叩き上げの英語 201
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叩き上げの英語 201
2018年10月25日(木)5:00 AM
私は東京出身というので埼玉県入間市の米軍ジョンソン基地内の東部訓練航空警戒隊に決まった。そして約一ヶ月後、千葉県安房郡鴨川町(現在は鴨川市)の嶺岡山レーダー基地に派遣された。
嶺岡山は標高三三五・六メートルで、千葉県の最高峯の愛宕山(四〇八・二メートル)に次ぐ二番目に高い山である。 十一月は寒い。ましてや山中である。夜は底冷えがする。あまりの静寂さにいざなわれ一人外に出る。
山頂から仰ぎ見る星たちは鏡のようにきらびやかだ。遥か彼方に輝く青白い光は澄み切った夜の空気を貫き通して木立の葉に届く。生い茂った木立はあたりにただよう闇よりも黒く、葉の一枚一枚が風にさやかに揺れると、そこだけ銀色に映える。
しばらくたたずんでいると寒さが足元からはい上がって、やがて肌身に突きささる。 隊舎とは名ばかりのバラック建てだ。青森県の三沢基地で、やくざにさそい出された飯場を思い出させる。
そう言えば三沢にも航空自衛隊基地ができたそうだ。同期の一人がそこに行ったはずだが、憲兵隊時代の暖かかった私の部屋が、なつかしく思い出される。
隊員たちの訓練は殆ど通信およびレーダーに関する特殊技術のみで、すべて米軍人及び民間人によって行なわれていた。これらの民間人たちは関係機器メーカーから軍の要請により派遺されてきた米国人技術者で一般にテックレップと呼ばれていた。
つまり Technical Representative (技術代表)の略である。 さすが米軍である。自衛隊側のおんぼろ施設とは格段の差があり、映画館さえ備えていた。平日は随時この映画館で講義が行なわれた。