叩き上げの英語 178
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叩き上げの英語 178

 

私にはさらにもうひとつの秘法があったのである。面接のため、係の人がその部屋のドアを開けて私を中に招じ入れたとき、ここが勝負である。

必ず自分が先に口を切ることである。これがその秘法なのだ。先んずれば人を制すのたとえ、私はだれに言うともなく、大きな声で、かつはっきりと言ったのである。 Good afternoon, sir.  

私はかつて先輩から聞いたとおりのことを実行したまでのことであったが、これが実に効果的なのである。まず自分がすーっと落ち着く。

ちょうど自分の番を待つ間にたまったストレスというガスが音を立てて抜けていくようである。そして次に相手を恐れなくなるから不思議である。

読者諸氏よ、ためしてみてはいかが。 面接担当官は米陸軍の中尉で「ハットリ」というハワイ生まれの二世であった。  隣にいる日本人の面接員から、日本語でいうから、ただちにそれをこのハットリ中尉に通訳してくださいと指示された。

わかりました、と答えた私はもう日頃の通訳にもどっていた。軍事法廷で証言をしてきた私はもうすっかり自信がついていた。  

しかし、その日本人職員が語り出した話はみるみるうちに私から自信を奪ってしまった。むづかしいのである。


”暴発”を通訳できず、ライバルたちは消える

「碑文谷警察署で朝礼のとき、ある警官の拳銃が暴発して傍の警官を傷つけた。そのため、その警官は三ヶ月の減俸処分にされた」 これで読めたのである。

安定所の彼女が私の憲兵隊の経験は役に立つといった理由が。