叩き上げの英語 175
私もとっさに答えた。Oh, not at all. どういたしまして、とこれだけだ。面接最中の彼女である。邪魔にならないように私の方からは短く答えた。決まり文句だが仕方ない。
やがて私の番が来た。私はタイプした英文履歴書を手渡しながら彼女の机の前にある椅子に腰かけた。
「先程はどうも有難う」と言いながら私の履歴書に目を通した彼女は、いきなり英語をしゃべり出した。
You have a lot of experience in many different fields, and the experience in the MPIS will help you a lot. OK, I will send you to the Public Safety Division of GHQ in NYK building right across the moat of the imperial palace.
ハワイなまりが少しあるが、きれいな発音である。あなたはいろいろな分野で経験が豊富であり、特にこの憲兵隊の経験が役に立つと彼女は言ってくれた。
さらに彼女はGHQのパブリック・セーフティ・ディビジョンに私を紹介する、ということであった。
一方的にここまで一気に話すと、彼女は横長のカードを机の引き出しの中から取り川すと何やら記入し、さらさらとサインをすると、今度は日本語でこう言った。
「これを持って東京駅丸の内側のNYKビルに行きなさい。そこで受付けにこのカードを見せればこのセクションに案内してくれます」。 私が口をきく機会は一回もなかった。
他のデスクではそれが英語のテストのように求職者が一生けんめい英語を話しているのが聞こえる。