叩きあげの英語 046
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叩きあげの英語 046

 

とくに当時の米軍の内線電話は野戦用のものをそのまま使っていたので感度は悪く、ますます相手の声が聞きずらくなっていた。

 

私はだから電話は一番苦手であった。だがドライバーは鳴ると平気で電話をとる。相手が英語なら「ジャストアモーメト(Just a moment.)」とひとこと言って、そばのGIなり私に渡せばよいが、私がとった場合はそうはいかない。

 

It is because I am supposed to understand English even over the telephone.

 

つまりたとえ電話の英語であれ私は英語をわからなければならないからである。

 

まわりにだれもいないときは悲劇(tragedy)の始まりである。私がとる以外仕様がない。その日かかってきた電話は外線からだった。GIの可能性は少ない。安心して出てみると案の定、日本人ドライバーからだった。途中でパンクしたというのである。

 

当時の道路は穴だらけ、くぎだらけで、今の道路からは想像もおそらくできまい。

 

速度を上げて走っていて、大きな穴にタイヤがドカンと落ち込むとGIドライバーはよく言った。

 

That is the best way to break the car.

 

「車をこわすには最善の方法だ」という意味だが、さしずめ「これじゃ車がこわれてしまうよ」ということであろう。そして私はその逆を考えた。

 

これからは直訳して、A car breaks easily. とかのようなありふれた作文などしないで「~the best way to~」としようと。