叩きあげの英語 026
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叩きあげの英語 026
2017年03月01日(水)6:48 PM
そんな状態の中で、私たちKPは毎日、日本人から見たら最高のぜいたくなGIの食事を三度三度頂戴し、あまつさえ、その日の余った料理を「プレゼント」と称し家に持たせてくれたのである。これが彼らにとってうらやましくないはずはなく、だから私たちは食事だけは毎食かくれるようにして窓のない部屋でとったのである。
ただ背が高く、清潔感のある若者というだけであの日えらばれた私たちKPはその飢餓の時代にあっては、まこと現在の数千万円の宝くじに当ったようなもの、いやそれ以上の幸運をつかんでいたと言えるかも知れない。
仕事を終えて帰ろうとしたある日の夕方、仲間の某君の「プレゼント」がない。KP七人分のところ、どういうわけか六人分しか用意されてなかったのである。みんなが私の顔を見る。GIに交渉して「プレゼントをもう一人分つくってもらえ」ということである。
何も私が交渉しなくても、その頃はブロークンながら、実にたくみに単語を並べて、およその要求を彼らは表現できたのである。 だが、「プレゼント」は与えられるもので、こちらから要求するのはどうも筋がちがうような気がする、という日本人的な考え方から、そんな交渉は言いにくく、私ならそこのところはうまく表現するだろうということだった。
もとよりそんなデリケートなことは表現できるものでもなく、私はそのような筋論より事実を伝え、用意できるものならつくってもらおうと考えた。