叩きあげの英語 022
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叩きあげの英語 022

 

 あとで私は一人でその通訳氏の部屋に行った。そして日本人であるその人が、どのように勉強したら先ほどのような素晴らしい英語が話せるようになったのか、どうしてもそれを知りたかったのである。

 

 

そのときの彼の言った言葉はいまだに忘れ得ない。たった一言、「勉強したまえ」であった。

 

 

 そして数年後、彼と私は別の米軍部隊で、同じ通訳として机を並べて仕事をするようになろうとは、神ならぬ身の知る由もなかった。

 

 

オリユードウイング?

 

 

 すでに触れた Where have you been? や Where did you get it? と同様に、ほとんど毎日のように聞かされるフレーズにもうひとつ「オリユードウイング?」というのがある。この部隊に限らずおそらく他のどこの米軍キャンプでもこれらの語(ことば)が日本人労務者に対して飛びかっていたはずである。

 

 

「相手はどうせいつかは引き揚げる進駐軍である」、「いつまで働いていたところで将来どうなるものでもない」、「そこは一時的な職場でしかない」などという考えから、「できるだけさぼり」、「よいものがあったら盗ってやれ」という風潮が日本人労務者の間にはびこっていた。

 

 

だからこういった行動をなじるGI側の言葉もひんぱんに繰り返し繰り返し聞かされた。その主なものがこれら三つである。

 

 

 私はそういった彼らのなじりの言葉に何か返答をしたかった。そうすることによって、ただ黙ってそれに従う他の人とは私はちがうのだ、ということを何とかして見せようと考えた。