叩きあげの英語 019
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叩きあげの英語 019
2016年12月16日(金)9:16 PM
米軍物資統制令なるものが当時あって、米軍の物品は日本人は一切持ってはならないということだった。
違反した者は、その罪の軽重にもよるが、下手をすると軍裁(軍事裁判 military court のこと)にかけられ、沖縄に連れていかれて強制重労働なん年とまことしやかな噂も流れた。
極端な例がアメリカタバコ一箱を持っていただけで警察に泊められたなどということもあった。
隊内にはGIが日用品を買う売店がある。売店というと、公園や駅のそれを容易に思わせるが、どうしてどうして立派な、一流デパートのワンフロアぐらいのサイズがあった。
これをPXと呼ぶ。Post Exchange の略である。軍隊用語である。隊外PXとしては銀座の服部時計店があてられた。
当時GIたちはほとんど全員がプラスチックでできていたタバコケースを持っていた。黄、ブルー、赤など色も多彩でとてもきれいなケースであった。
タバコ一箱がそのまますっぽりと入るもので、そのケースとタバコの間に恋人の写真を入れているGIも多くいた。たまたまそれをもらい、持っていると意地悪なGIは必ずといってよいほど、「オッジューゲレット」という。それも疑わしい目とけわしい顔をしてだ。
彼らの居室から物がひんぴんとなくなるのである。あきらかに盗難である。犯人は日本人であると彼らGIは思っていた。私も残念ながらそう思わざるを得ない。
物をたくさん持っている奴から少々ぐらい取ったってたいしたことはない、という風潮が日本人仲間にあったことは否定できなかったからである。