叩き上げの英語 152
そんな輩がパトロール中のMPを狙い、やたらに話しかけてくる。怪し気なブロークン英語にMPもうんざり気である。
相手にされなくても、それでもちんぴらはしつこい。MPはそんなとき、彼にこう言う。 I don’t understand your English at all. Why don’t you tell my interpreter what you want in Japanese?
なにか内容がありそうな言葉だと思ったちんぴらは、最初はまったく無視していた通訳の存在をみとめないわけにはいかなくなってきた。
英語が返ってくるとまったく無能になる。 関係代名詞の what がまじった文で、ちんぴらなどの知るところではない。 「あなたの英語はさっぱりわからないから通訳の私に言ってくれ」と言っていると通訳する。
通訳にはその方法に直接話法と間接話法があり、場合によって使い分ける方がよい。このような場合は「〜といっている」という間接話法がよい。
「なになにして下さい」というのに、くだけた言い方で Why don’t you に動詞をつづけるのがある。この why は疑問副詞の「なぜ」だから、直訳すると「なぜあなたは〜しないのか」となるが、つまりこれは、「こうしてください」という意味に転じていることがわかる。
MPはその中に、in Japanese。つまり「日本語で言え」と言っている。これはそのちんぴらに対するMPの精一杯の皮肉である。
ちんぴら氏は言うのである。「私の知っている店にちょっときてくれませんか。ママさんも美人だし、きれいな女の子もお世話しますよ」。
仕事が終ったときにでも来てくれればよく、今日は店だけでも見ていってくれ、と熱心な客引きになる。