叩きあげの英語 011
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叩きあげの英語 011

 

 食事の終わるごとに彼らは、てんでに外に建てられた小屋まで来てはそこで自分のメスケを、最初は石けん湯で洗い、次に白湯でゆすぎ、最後に熱湯で消毒する、という順序でクリーニングしていく。

 

その時は特に仕事のない私たちの稼ぐチャンスでもあった。つまりそのメスケの洗浄を代行するのである。当時としてはまことに貴重なアメリカタバコとかチョコレート、チュウインガムなどをその報酬としてもらった。

 

 少数の例外を除いて彼ら若い兵士たちは大変友好的、かつ親切で思いやりがあった。私たちの窮乏をよく知っており、物をくれたさにわざわざ私たちに洗わせてくれたのである。

 

こういった兵士たちは、自分の肉体以外の衣食住はすべて政府の官給品 Government Issue であるところから、その頭文字をとってGIと愛称されていた。

 

「たばこをください」は学校のテキストどおり Please give me a piece of cigarette.と言ってみたが、あるGIは、たばこを胸ポケットから取り出し、やおら一本抜いて、なんとそれを三分の一ぐらいの大きさにちぎって、「ヒヤ here」と言って差し出したではないか。

 

まわりのGIどもはにやにや、ウインクをしているものもいた。なるほど、a piece of ~は「・・・・のひとかけら」という意味もあるのかと感心したものだった。