叩きあげの英語 033
ホーム > 叩きあげの英語 033

叩きあげの英語 033

 

 

 助動詞がその前につくと動詞は原形にもどらなければならない、というルールもわかり、したがって、am, are という動詞はすべてその原形の be となることがわかったのもこの頃である。


それまでは be についてはまったくわからず、いつもなやんでいたものだっただけに、そんなもやもやが一挙に消え去り、文字どおり目からうろこが落ちた心境だった。


工場での疲れも夜の寒さも忘れ、KPのときに耳にしたいろいろな英語を思い出しつつ、ひとつひとつその構成を文法的に理解していった。ひとつを乗り越えるよろこびが、またそのつぎのひとつへの挑戦の力となっていった。


私の現在までの生涯を通じてこのときほど猛烈に勉強したことはかつてなかった。

 

 通訳となって目出たく就職できるその日まで工場での機械との「冷たい」つきあいを止めない、という父との約束があり、これがまたいわば背水の陣となって私の勉強によりいっそうの拍車をかけたのである。

 

 通信教育を受け始めてから十ケ月たったその年の暮れにその通信社主催の通訳技能の検定試験が行なわれた。もちろんそれはなんら公的なものではなく、一民間企業の認定に過ぎなかったが、私は自分の力をためす絶好の機会だと思い、それを受けてみた。

 

 結果は、合格であった。その合格認定を手にしたとき、ああ、これで工場が止められるという喜びの方が、合格のそれよりも強かったのである。