叩きあげの英語 013
ホーム
> 叩きあげの英語 013
叩きあげの英語 013
2016年11月04日(金)7:33 AM
ローマ字でみなの名前を代行して書いたその日以来、私は英語が少しできると仲間やGIたちに思われてしまった。
そして私もそう思われつづけたいと願った。知っているはずの私が辞書を見る姿は私の名声にマイナスにこそなれ、プラスになるはずはないからである。
Assignment は Mess Hall, C troop とあり、Tyep of Work のところにはKPとあった。さあ、このように略されるとさっぱりわからない。
「これは何ですか」は疑問詞の what に、ひっくり返しの is this をつければ疑問文になることは知っていた。トライしてみたのである。What is this? と言いかけ、どうせなら this のかわりにK.P. と言おうと思い、さらにその疑問、this は「この」という意味もあると思い出して、口がひとりでに動いた。
What is this KP? 私が、それこそ生まれて初めて外人に向かって作文し、話した完全な文がこれである。
もちろん今は「KPは何の略か」という、特に略字(abbreviation)の場合は What does this KP stand for? と言えるのだが、しかしまだ終戦後2カ月も経っていない当時としては、一介の日本の十六歳少年がまともな英語をしゃべるのは本人にとっても大変なことだし、またそれを聞くGIにも少なからずおどろきであったのである。